第28章 欠けたところ
初めてだった。
そんなことを言われたのは。
「………」
守れなくて、ごめんだなんて。
「…私は何ともないよ」
「……いや、お前のことをわかってるつもりだった自分に腹が立つんだ。」
私はどう答えたらいいのかわからずにいた。
「お前一人に背負わせた。…お前の中で、俺はまだ守るべき存在なんだよな。」
「?」
「…わからないか。」
実弥は微笑んだ。
「なら。一つ約束してくれるか。一人で勝手に行動はしないって。お前のいない家にいるのが俺は辛いんだよ。」
「……うん」
私はうなずいた。
「あと、すごく心配した。」
「うん。」
感情がひしひしと伝わってくる。
全部理解できたわけでもないけれど、私は申し訳なさでいっぱいになった。
「何かあったら言ってくれ。俺だってお前を守りたいんだ。…お前は大切だから。」
その頃には体が動いて起き上がれるようになった。勢いに任せて実弥に抱きついた。
「わかった、ごめん、もうしない」
「…うん」
「でも、実弥は頼りないとかそんなこと思ってないよ。」
「…ああ。わかってる。守ってくれてありがとうなァ。」
私がぎゅっと強く抱きしめると実弥は背中に手を回してきた。
「……ううん。まだだよ。」
「…?」
「まだ終わってない。」
私は気付けばそう漏らしていた。実弥の前だと甘えてしまうのだろうか。…全部天晴先輩の言っていた通りだ。
自分の手が震えている。実弥はそれに気づいたのだろうか。
「…どうしたんだよ」
「まだ言えないんだけど、ちょっと怖い…かも」
「…言えない?」
「い、言うよ。ちゃんと言うけど…私がもう疲れちゃった。」
手の力を抜いてもたれかかると、実弥は難なく支えてくれた。
「…まあ、休んだら良い。」
実弥はそう言った。
「でも、きちんと話せよ。」
「…わかってます。」
その圧に耐えきれず、つい実弥と口約束を交わしてしまった。
…ああ、ぐずぐずに甘やかされているなあ……。