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キメツ学園ー輪廻編【鬼滅の刃】

第28章 欠けたところ


「いっつもお腹を鳴らしている子だった。」


ああ、そうだ。
天晴先輩と出会った頃…まだ、鬼殺隊にはいって間もない頃だ。


「ご飯が食べられなかった。…いえ、お腹が空いたってことを知らない子だった。いつご飯を食べたらいいか、全く理解していなかったの。…理解できる?まだ14歳とかの子供がお腹を鳴らしてニコニコ笑っているの。

まだそれだけならよかった。けど、この子は痛いって感覚も理解していなかった。どれだけ血だらけになっても平気そうにそこら辺を歩いているの。私、何回治療をしてあげたか数え切れないわ。

熱が出ても、唇が紫色になるほど寒くても、平気そうにしているの。…演技でもなんでもなく、それが普通だと思っていたのよ。」


私はまだ起きることができなかった。……しばらく体は動かせそうもない。意識はあるのに、体が動かない。


「あなたも知っていると思うけど、この子は嫌われていた。……私は今でも納得ができないわ。その理由にね。

この子は父親と隊士を殺した。人を殺したことは確か。でも自分を襲った上に妊娠までさせた父親よ…!?それに、隊士だってもう鬼になりかけていた。鬼を滅するべき鬼殺隊としては褒めるべきなのよ。

それなのにあらぬ噂を流されて…。父親のこともそう。何も知らない奴らが霧雨ちゃんに石を投げた!」


天晴先輩の声に怒気が込められる。

……ああ、どうか。どうかこんなこと言わないでほしい。こんな声聞きたくない。お願いだから。


「鬼殺隊が…人間を救うべき鬼殺隊が一人の女の子を全員でいじめたの!刀鍛冶は刀を寄越さなかった。隊服だって用意されなかった。石を投げるならまだ良い方。顔が腫れるまで殴るやつもいた…!!」


全部遠い思い出だ。
…天晴先輩はよく私の面倒を見ていてくれたけど…こんな話を聞くのは初めてだった。


「それでも笑っているの。自分を殴る奴のために霧雨ちゃんはずっと闘っていた。誰もこの子に勝てないほどになるまで強くなったわ。小さな手で刀を握って、どれだけの豆を潰したか…。

手がボロボロで刀が握れないから、無理やり包帯で手に刀をくくりつけていた時だってあるわ。」


今すぐ起き上がって、先輩に抱きつきたかった。
でも、体が動かない。私は大丈夫なんだって、そんなこと言わないでって、言いたかった。
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