第27章 神様の言葉
「鬼舞辻無惨と会ったのね。」
単刀直入にそう聞いてきたので、ハッと顔を上げた。…まさかこの人にまで知れ渡っていたとは。
「そして、何も言わずに一人で闘った。」
「…一人じゃないです。みんながいないと、私は何も……」
「いいえ。あなたは一人で闘ったの。あなたが動けたのは誰かの行いのおかげかもしれないけど、最終的にあなたが一人で全部やってしまったのよ。」
…?
「あなたは誰かを救うためなら、自分はどうでも良いって思える子よ。」
「…」
「でも、それで良いなんてことはないの。絶対。」
先輩の話はまだまだ続きそうだった。しかし、私はこの暑さでかなり参っていた。どうせなら早く建物の中に入りたいけど…話を聞かないといけない。
「今回は誰も傷付かなかったかもしれない。霧雨ちゃん、あなたを除いて。」
「…?私、傷ついてなんかないですよ。」
「そう。あなたはそう言ってしまう。みんなの幸せがあなたの幸せだものね。…本当は誰よりボロボロなのに。」
「……??」
「わからないのね。そう…あなたは、わからない。」
私は先輩に手を伸ばした。まるで泣いているように思えたから。
「……どうしたら伝わるのかしら。この悲しさが、寂しさが、どうすればあなたに伝わるのかしら。」
「先輩、どうして泣くんですか。」
「…ああ、ごめんなさい。霧雨ちゃん。良い子の霧雨ちゃん。かわいいかわいい私の後輩。大切なのよ。愛しくさえあるの。」
先輩は泣いていた。けれどその理由はわからなかった。
「…ごめんなさい、取り乱して。」
「わ、私は…別に…。」
「行きましょう。…あの子のところまで返さなきゃ。」
先輩がそう言って建物の中へ歩き出す頃には、私の体は冷え切っていた。…暑いのに体が冷たいなんて、変なの。