第27章 神様の言葉
外に出て神社の本殿付近に行くと、阿国が言っていた不審者らしき人は確かにいた。
サングラスをかけてその人と視線がかち合う。…いや、気配で誰かはわかるけど。
「っ!霧雨ちゃん!!」
天晴先輩。顔を隠して地味な格好をしているのはファンの人に見つかりたくないからだろう。
彼は持ち前の俊足で一瞬にして私に攻め寄った。
「せんぱ「あんた何してんのよ!!!!!!!」」
声をかけたら怒鳴られた。さすが雷の呼吸の使い手。めっちゃ声でかい。キーーーンてなる。私の鼓膜大丈夫か?
「??何って…」
「お馬鹿ぁ!!!!!」
先輩はぎゅうっと私に抱きついた。
…神社に人がいない時間帯で良かった。返送をしたまま涙声で私を怒る先輩が不審者と間違えられて通報されるのは当然のことのように思えたからだ。」
離してくれと言ったが先輩は聞く耳を持たない。私をタクシーに押し込んで勝手に行き先を決めてしまった。
そこは私の家。まあ、正確には私“たち”の。
「怒られることをしたってことはわかる?」
移動中、天晴先輩はそう聞いてきた。
「…あります。」
「そう。なら良いわ。まあ、怒るんだけどね。」
大した距離もないのですぐに到着する。
「あ、お金私が…」
「うるさいわね」
天晴先輩はイライラしたようにそう言い、代金を払ってくれた。
「すみません…」
「…はあ」
先輩はため息をついた。
「ありがとうって言ってほしいわ。」
「……。」
何も言えずにいると、先輩は先に歩き出したので私もそれに続いた。
「……霧雨ちゃん」
「何ですか?」
「…ちょっとお話ししましょう。帰る前に。」
すぐそこにマンションはあるのに、先輩は立ち止まった。
まだ蒸し暑い炎天下の中、私たちはやけに冷たい空気に包まれていた。