第27章 神様の言葉
「今日はね、ママの機嫌が良かったの」
阿国はそう言いながらスイカを切り分けてくれた。
三人でスイカを持って縁側に並んで座った。一口齧るとみずみずしくて甘ったるくて、どうしても口元が緩んでしまう。
「お前がこっちいるの珍しいな。いつも神社の奥にいるのに。」
「なんか、ママが帰っておいでって。」
兄妹が仲良さげに話すのをよそに私はぼんやりと今後のことを考えていた。
さて、もう一段落ついたのだからやることはないかと思うのだが。一つだけ気がかりなことがある。それ次第だとまだのんびりはできない。
充電器につながったスマホに目を落とすと、もう100%近くまで溜まっていた。久しぶりにスマホに目を通す。
「………」
そして静かにスマホを伏せた。
「不在着信数がはんぱじゃねえ…」
「だから言ったのに。」
そうこぼしながら陽明くんが庭にぷっとスイカの種を飛ばした。
「ちゃんと連絡はしとかないと。今回のこと、もしかしたら警察沙汰ですよ?」
「…ひとまず全部に返しとくか。」
「?警察沙汰って?二人とも本当に何してたの?」
「お前は知らなくていいの。」
陽明くんが言うと、阿国はむすっと頬を膨らませた。
「兄さんのバカ!」
そう言って食べかけのスイカを持ったまま部屋から出ていってしまった。……怒らせたようだ。
「…放っておいて良いの?」
「良いんです。俺にかまってほしくてやってるだけですから。」
陽明くんはそう言うが心配だ。
「………まあ…これからのことはちゃんと考えるよ。とりあえず、今は帰ろうかな。」
「…そうですか。」
気を取り直して私は食べかけのスイカに口を着けた。
「この言葉はあなたに言っても無駄かもしれませんけど、言っておきますね。」
「ん?」
「何かあったら、またいつでも呼んでください。」
陽明くんがにこりと笑う。私はありがとうと返した。
………?
無駄って、何でそんなことを言うんだろうか?