第27章 神様の言葉
陽明くんの食欲がすごかった。さすが高校生。ありえないスピードでご飯を食べていく。その食べっぷりを眺めながらちまちまと食べ進める。
ひやむぎとおにぎりの他にも、だし巻き卵やサラダもあって栄養満点の昼食だった。
「……」
「どうかしました?」
「いや、なんか…懐かしい味がするなって…」
初めて食べるはずのご飯なのにそんな気がしなかった。遠い昔で食べたことがあるような気がしたのだ。
「変なの」
「はは…そうだね。」
取り繕うように苦笑する私に陽明くんはさりげなく聞いてきた。
「さん、これからどうするんですか?」
「あー、どうしようね。」
他人事のようにそう答えた。
「スマホの充電が切れてたからこの数週間誰とも連絡取れてないんですよね?」
「さっき充電器貸してもらったからそろそろ電源入るとは思うんだけど…。そうだねえ。」
「無惨のことはもう安心して良いと思いますよ。
「でもさ、そのことを産屋敷側はわかってるのかな。それがちょっと怖いんだよね。」
「怖い?」
陽明くんが首を傾げた。
続きを話そうとしたときに誰かが軽やかな足音とともに部屋の中にはいってきた。
「あれ?兄さん?」
「阿国」
陽明くんの妹の阿国だった。彼女は私を見て目を丸くした。
「ええ!?なんでいるの!?」
「…お邪魔してまーす」
理由を話すのは得策ではないだろうと思って黙った。嘘をついても阿国はわかってしまうからだ。
「あー!ご飯ほとんど食べてる!」
「え、お前まだだった?」
「ううん!お昼ご飯ね、ママと阿国で一緒に作ったの!おにぎりは阿国が握ったんだよ、美味しかった?」
「そりゃもちろん。」
陽明くんがにこりと笑う。
…おにぎりに美味しいも美味しくないもないだろうけど。
いや、そんなことないか。過去に…大正時代に私が作ったおにぎりを食べた優鈴は顔を真っ青にしてたっけ。
『なんでおにぎりだけでこんなに不味くなるんだ』と般若のような形相で言われた。彼曰く、ご飯が炊けていなくてほぼ生。塩の味しかしない。そして、握るのが下手すぎて形が変だったらしい。
いやね?私にはおにぎりに見えてたんですけど。まあ人にはそれぞれの見方があるんだね。ハハッ。