第26章 雨は太陽と共に
「死に取り憑かれたって、今は生きてるじゃない。どうして死ぬことしか考えられないの。」
そこまで言ったところで陽明くんが動いた。
「乱暴はよせ。落ち着いて話をしよう。」
無惨が私の胸ぐらから手を離した。
「無惨。千年前、俺が言ったことは覚えているか」
「…ふん、どうだか」
それが嘘だと、私はすぐにわかった。
さっき陽明くんが現れた時に無惨の感情は揺らいでいた。きっと無惨の中で陽明くんは大きな存在なんだ。
「あの日言った通りだ。俺は君を救いたかった。」
陽明くんは自分を追い詰めるようにぐっと拳を握りしめた。
「でもごめん。俺にはそんな力なかったんだ。俺に運命を変える力はない。つまらないのは俺自身だった。」
「…何が言いたい。」
「だから、今度こそ向き合いたいんだ。もう諦めたくない。」
陽明くんは臆することなくそう言った。
「君のただ一人の友人として!」
その言葉に嘘はなかった。
…本当に優しい子だな。無惨にさえもこんな言葉が言えるなんて。たとえ同じ立場だとして、私に同じことが言えただろうか。
「なぜだ」
「何が?」
「なぜお前は頑なに私にまとわりつく。」
…まとわりつく?
首を傾げる私をギロリと無惨が睨みつける。一瞬ヒヤッとしたが無惨は勝手に話し始めた。
「小さい頃からこうだ。私の病床に顔を出してはよくわからないことをペラペラと話す。勝手に笑って勝手に怒って勝手に帰っていくような奴だ。」
「え」
「だって暇だったし…まあ、僕の話に付き合ってくれるのが君だけだったんだ。」
「私は病気で床から離れられなかったんだ」
「えええ」
二人はネチネチと言い合いを始めた。…待って。
待って。
「…二人とも、もしかして超仲良し…?」
「そんな訳があるか」
無惨が敵意を剥き出しで言うのにも関わらず、陽明くんはにこやかだった。