第26章 雨は太陽と共に
「あなたの部屋にある鍵のかかった引き出しの中身を見たの。」
まず私は自分のスマホを見せた。
「入っていたのは私のスマホ。それから、この紙と…今手元にないけど分厚い書類。」
「……。」
無惨はため息を吐き出した。
「それで?何が納得できないんだ。」
「疑問に思っていたの。どうして今なんだろうって。あなたはその気になればいつでも動けたのにそれをしなかった。何かきっかけがあるのではないかと…それが気がかりだった。」
「……。」
「そのきっかけがこの紙に書かれていることなんでしょう。私はそれが納得できない。この理由であなたが復讐の道を選ぶのは間違っている。」
私が見せた紙に無惨が目を落とす。
その紙は、一番初めに大きく病院の名前が書かれていた。
続けて、『診断書』…と。
「そうだ。そこに記されている通り、私は病でもう長くはない。」
無惨は心臓のあたりをおさえた。
「お前の言う通り、きっかけは病だ。」
「…巌勝やスパイの人たちは知っているの?」
「知らんだろうな。あいつらは勝手に私の元に集まってきただけだ。」
……。
「私は納得ができない。あなたは自分の病気の治し方をたくさん調べていた。それをまとめたのがあの分厚い資料だった。」
「ああ、そうだ。しかしどこにも治す方法などはない。お前は死を受け入れて死ねと言うのか?」
無惨は鼻で笑った。
「そうか。私が死ねば満足か。」
「……」
「大した正義だな。」
私は軽く深呼吸をした。
落ち着け。心を乱されるな。冷静になれ。
「じゃあ、あなたは私が死ねば満足するの?」
「は?」
「鬼殺隊が全員不幸になればそれで嬉しい?あなたは喜んで、安心して死ぬことができるの?」
言い終わる前に無惨が私の胸ぐらを掴んだ。避けることもできたが、あえて受け止めた。
「貴様に何がわかる」
「わかんない」
「死に取り憑かれた私の何が」
「わかんないから納得できないの!!」
鼻が触れ合うんじゃないかと言うほど迫り合う。無惨の目が吊り上がり、額に血管が浮かび上がった。
「わからないよ」
私は再び静かにそう言った。