第26章 雨は太陽と共に
私たちは学園から抜け出して、陽明くんの家…つまり神社に向かった。
「…こんなところに連れてくるなんて、謝罪でもさせるつもりか?」
「結構だよ。お前一人の謝罪で鎮魂ができるのなら、平安の世にお前を土下座させている。…あの手この手でね。」
「ふん」
…この二人と一緒にいるのすごく緊張するんだけど。
「とにかく話そう。行き先は、あそこ。」
陽明くんはとある場所を指さした。
そこは、どう見ても神社の本殿だった。
生まれて初めて神社の本殿の中に入った。いつもお賽銭を投げて手を合わせているあの向こう側にまさか入るとは…。
「神の前で話すのか。」
「理由はないよ。二人の俺に見守られていたらお前も逃げないだろう?」
「二人の俺?」
「ああ、神社に祀られてるいの千年前の俺。」
「え」
ちょっと待ってスケールデカすぎて。
…?ちょっと待て。それって、千年前…平安時代に生きていた陽明くんが実際に祀られてるってこと?
私、今までこの世界は私が生きていた世界とは別物だと思ってた。パラレルワールドのようなものだと。
けど。
そもそも初めからおかしい。鬼殺隊の鎮魂のために建立された神社が存在すること。継承が断れたとはいえ、呼吸が舞いとして今世にまで残っていること。
そして、私がこうして生まれていること。
生まれ変わりとは、なんだ?それならば私は一度死んで、もう一度同じ世界に生まれたこととなる。
私は人間をやめた。死ぬはずもない、鬼の私が死んだのは…。
あの、世界は。
「話をするなら早くしろ」
無惨の催促の言葉で我に返った。ああそうだ。今はこんなこと考えてる場合じゃない。
「それで?お前はいったい何に納得ができないんだ、霧雨」
すでに座っている二人のそばに腰を下ろし、私は少しずつ言葉を紡ぎ始めた。