第25章 不滅の心
夜の神社というのは人気が少ない。
陽明くんは客用のお風呂や部屋を私に貸してくれた。
「親はここに来ないから、バレませんよ。」
いたずらっ子のようにいうので、年相応な部分が垣間見えてなんだかホッとした。
「はあ、生きた心地がしなかった。」
「でしょうね。ていうか、もう二週間は失踪してることになってますけど大丈夫ですか?」
「えっ、二週間も経ったの?」
…あの家にはカレンダーとかもなかったからな。日付感覚もおかしくなってる。
「……そういえばそうと、みんなどうしてるんだろ。」
「うーん…。まあ、春風さんに伝言残したのが良かったですね。みんな心配しつつ、大事にはなってませんよ。ただ一人を除いて。」
うん。それは…想像できる。
ていうか、すごいなこの子。言ってもないのに全部言い当ててくる。…それほどの力を持つってことか。
「どうして同棲中の彼氏である不死川先生に何も言わなかったんですか?」
彼氏ってことまでバレてる!?
「…いや…なんか、実弥はたくさん心配してくれるし、今までも迷惑かけまくりだからさ。心配するだろうと思って…。」
「うん。そうですか。まあ大丈夫でしょう。こうなったら無惨なんとかしましょう。」
陽明くんは張り切って親指を立てる。
いや適当か。…私に通じるものを感じる。
「とかく、ここで話し込んでもどうしようもないので今日はお休みください。ありがたいことに明日からお休みなので、一緒に学園行きましょう。」
「行ったら何か起きるの?」
「明日は無惨が来ます。…理由は、まあ、あなたが逃げたからでしょうね。」
…なんでわかるんだ。
「…。」
「落ち込まないでください。いいことです。無惨の予定を狂わせたんですからね。」
「…まあ、そうかもだけど…怒りの矛先は他の誰かに向いてしまったってことでしょ?」
「矛先が当たる前に防いで仕舞えばそれでいいんです。」
陽明くんはにこりと笑った。
「あなたが舞台を整えてくれました。…俺ではこうはならなかったでしょう。ありがとうございます。」
「…?よくわかんないけど、そっか。」
「ええ、あなたのおかげです。全て。」
彼はその後すぐ部屋を出て行った。
充電器を借りれば良かったな、と思いつつ電源のつかないスマホを握りしめて私は眠りについた。