第25章 不滅の心
「お前が最強だからだ。」
頭を悩ませる私に巌勝が言った。
「は?」
「人は最強を失えば心が傾く。自然の摂理だ。」
……?
「強さを誇る者はそれだけ精神の支柱になる。無惨様の台頭と共にお前が姿を消せば嫌でも焦るだろう。」
「え、いや、それはないって。私嫌われてたんだよ。」
まあ、言ってることはわかる。強い人がいてくれたら安心するよね。強い人がいないってことはその安心が消えちゃうわけだし。
「それに、私が強かったわけじゃないよ。みんなが強いの。だから大丈夫だよ。」
「…どうだか。」
巌勝は続けた。
「その軽率さ、本当に似ている…。」
「?」
「…他人が幸せならば自分はどうでもいいと言うところもだ。……私はそれが恐ろしい。」
…?
「誰のこと言ってるの?」
「いや、お前には関係のないことだ。」
そう言って私に背を向けてしまう。
…コイツの考えていることもわからんな。
ともあれ、私がここにいる限り無惨はおとなしい。だからこそできることをしなければ。必ず無惨を無力化させる。…どうすれば良いのか、と言うのはまだわからないけど。
無惨の意識は今のところ私に向いている。神社と学園への被害は特にない。だが、今状況は非常にまずい。
学園にはすでにスパイがいるわけだし、悠長にはしていられない。最低でも一週間以内に無惨を止められるだけのものが欲しい。
…焦ってもどうしようもならない。幸い、巌勝は私に協力的だ。でも無惨のこととなると見逃してはくれないだろう。
コイツの監視もそこそこ厄介。
ともすれば、私が自由に動くことができるのは……。