第24章 私はどこの誰
その時、ガチャッと音がした。
「何をされているのですか?」
何も考えまいとぼうっとしていたので何が起きたのかよくわからなかったが、いきなり部屋に入ってきた人物は多分こんなことを言っていたと思う。
その時ピタリと無惨の手が止まったので、私の意識もだんだんはっきりとしてきた。
……あぁ、継国巌勝か。
他人事のようにそう思った。
「貴様、なぜ勝手に入ってきた?」
「何をされているのかと聞いているのですが。」
場所のせいか、私から彼は見えない。だが、声からして怒っているようだった。
「見てわからんのか」
「ええ、わかりません。そのようなことをなさる意味が。」
軽蔑するような声だった。
無惨は気を悪くしたのか声を荒げた。
「どちらにせよ、貴様には関係のないことだ。出て行け。」
「いいえ。続けるなら私が見守りますよ。」
「……。」
無惨が大きなため息をついた。
「もう良い。…興が削がれた。男に事を見せる趣味はない。」
脱ぎ散らしかし、床に散乱した自分の服を拾い上げて身につけ始めた。私はまだぼうっとする頭でそれを眺めていた。
無惨が言葉もなく出て行ったことがわかってもずっとベッドに寝転んでいた。
すると、体の上にバサッと何かがかけられた。何かと思えばスーツの上着だった。
「…何?」
「服を着ろ。見苦しい。」
そう言われたのでフラフラと立ち上がって服を拾い上げた。
「……」
「どうした」
「…いや、別に」
私ははあ、と息を吐いた。
「助けてくれたの?」
「声が不快だっただけだ。」
「私、うるさかった?」
「無惨様だ。」
本当に真剣な声でそう言うので、思わず吹き出してしまった。
「仲悪いの?」
「そうではない。恩もあるのでお側にいるが、全てを肯定する気にはならないだけだ。」
「そう。…良い関係ね。」
「いや、きっとさっきのことで給料を減らされる。」
またまた真顔でそんなことを言い出すので、ついに私は大笑いをしてしまった。