第24章 私はどこの誰
天井が見えた。何か考える前に、すぐに無惨が覆い被さってきた。
無惨と父親の顔が重なった。
なぜ、と思う前に無惨の手が体に触れた。
忌々しい記憶がフラッシュバックする。そのせいで一瞬何をされているのかわからなかった。
しかしすぐ我に戻った。
「やめて!何するの!!!」
「わからないほど子供ではないだろう?まさか、生娘とは言うまいな?」
「…!!!」
その物言いにゾッとした。
「いや……!いやッ!!やめて!!離して!!」
「ハハッ。暴れたところでどうにもならんぞ。」
無惨は私の耳元で囁いた。
「私も父親のように殺してみるか?」
「…!!」
なんで、それを知っている。
どうして。
鬼殺隊に入る前のことは、知らないはず。
「忘れたか?お前たちが私を打ち倒した夜、お前は私の体に吸収されていただろう?」
「……」
「記憶を読むのは容易いことだ。」
…そうだ。
最終決戦の夜。私は無惨の元まで珠世さんを守りながら連れて行った。そこで吸収された。
無惨の体の中でも、不思議と自我はあった。あの時の気持ち悪さと言ったら今でも思い出したくない。
「いいぞ。殺してみろ。」
「…!や、やめて……!お願いだからぁ……!!」
「はははははは!元鬼殺隊の剣士が私に泣いて懇願するとは、これは面白い!!」
ぐっと唇を噛む。
無惨の手は動き続ける。嫌悪感のあまり涙が溢れた。泣きたくなかったが、涙は止まらなかった。
「泣く必要はないぞ。私は今気分がいいからな。一つ提案をしてやろう。」
「…てい、あん……?」
無惨の笑顔に嫌な予感がした。
「私の元に来れば、鬼殺隊への復讐は諦めよう。」
「……は?」
「お前の顔は美しい。……そして、体も。苦労してお前の母親に縁談をこじつけたことも報われると言うものだ。」
……?何を言っているんだ?
鬼殺隊への復讐だなんて無惨にとっては何が何でも叶えたい悲願ではないか?私一人に復讐を諦めるだけの価値があるとは思えないが…。