第24章 私はどこの誰
質素な部屋だった。
壁には花の絵が飾られていたが、装飾品はそれだけ。机とタンス、今私が寝転んでいるベットしかなかった。
「あんのクソ野郎…」
ボソッと呟く。
頭が痛い。…あの甘い匂い、多分薬だな。そのせいで思考が鈍った。
「……何これ、誘拐?」
持っていたカバンを探したが、どこにもなかった。となればスマホもない。おまけに知らない部屋と来た。ちなみに窓はない。
…ドアはあるけど。
「………。」
特に気配はしない。…いや、近づいてきてる。
慌ててベットから降りて立ち上がった。すぐにドアが開いた。
ポスっと柔らかい音がした。
たった今部屋に入ってきた無惨の顔面に私が枕を投げたのだ。…幼稚園児並みの攻撃だが、とりあえず一発やっとかないと気が済まなかった。
「目が覚めたか、元気だな。」
地面に落ちた枕を無惨がためらいもなく踏みつけた。
「もう少し眠るかと思っていたが。」
「あたま痛いわよ、お陰さまでね!」
無惨は部屋のドアを閉めた。
「いったいここはどこなの?私をここから出して!」
「出す?なぜだ。お前は私と結婚することになっていただろう?」
「…は?その話は電話でした。お前も興味はないと……。」
「お前、さては母親と仲が悪いな。」
急に母が話に出てきたので、思わず言葉に詰まる。
「あの女は話を進める気でいたがな。まあ、興味がないのは本当だが別に嫌だと言っているわけではない。」
「…なら、私があの人と話して終わらせてやるわ。それでいいでしょ!」
「ふふふ、よほど私が嫌いなようだな。」
当たり前でしょ、と言おうとした時に無惨が私を突き飛ばした。まだ体に残る薬の作用のせいで受け身も取れず、私はまたベッドに寝転んだ。