第24章 私はどこの誰
巌勝が私を抑えようとするのを無惨が手で制した。
「お前、人を殺したのだろう?」
「…!!」
無惨が続ける。
「…それは、前世で」
「私が人を殺したのもそうだが?今は誰も殺していない。これでめでたくお揃いだな。」
「違う!!」
「何がだ?お前は人を殺した。そして鬼になった。私と何が違う?」
「違う!!何もかもが違う!!!」
「何が違うんだ?言ってみろ。」
何も言えなくなってしまった。言葉が出なくなった。だって、全て真実だから。
そうだよ。私だって同じだ。人を殺して生きてきた。薄汚く、長い間。
「お前は自分の罪から逃げてきただけだろう?」
「……逃げて、ない…」
「ほう?なら私も鬼殺隊に入れば人を殺したことは許されたと。そうか。」
無惨はふっと鼻で笑った。
「お前が殺した奴らは随分と安い命だな。ああ。しかも鬼殺隊はお前に石を投げたというじゃないか。お前の言う鬼殺隊は本当にお前が居場所にする場所だったのか?」
何も言い返せなかった。
ただ、冷や汗だけが流れた。自分がどんな顔をしているのかもわからない。足の感覚さえも薄れていく。
そこで甘ったるい匂いが強くなった。…異常なほど香るこの匂い、いったい何なんだ?
「霧雨」
頭がふわふわする。
…ああ、どうしよう。もう何も考えられない。
「私の元へ来い。」
足に力が入らない。
無惨の声だけが大きく聞こえた。
「私はお前を否定しない。」
その声を最後に、私は前も後ろもわからなくなった。
目が覚めたら、見知らぬ部屋のベットの上で一人寝転んでいた。