第23章 時を超えた告白
優鈴はすぐに見つかった。宇髄先輩の言う控室にはいなかった。人のいない廊下でぽつんと一人、窓の外を眺めていた。
「優鈴」
名前を呼ぶと優鈴は背を向けた。
スタスタとそのまま歩いて行こうとするので、また名前を呼んだ。
「優鈴…!」
「来るなよ」
冷たい声が響いた。
「……見たろ、そういうことなんだよ」
優鈴は止まらない。私は早足で追いかけた。
「うん。伝わった。だから止まって欲しいの。話がしたい。」
「やだよ。」
その手を掴んだ。
ひどく冷たい手だった。
「…フるんだろ」
「……!」
「……ねえ」
優鈴が振り返った。
開けられた窓から生ぬるい風がはいって来て、汗で湿った優鈴の髪の毛を揺らした。
「僕ね。本気でお前に恋してたよ。」
「……うん。」
「大好きだよ。」
優鈴の手から力が抜けていく。
「…初めて…会った時から……」
声が小さくなっていく。
「藤襲山?」
「…何、お前覚えてるの」
「忘れるわけないよ。優鈴との思い出は、全部全部私の宝物なんだよ。」
「………」
優鈴が震える唇をキュッと噛んだ。
「僕もだよ」
私は強く力のない彼の手を握りしめた。
「僕はずっと自分が生きてちゃいけない存在だと思ってた。」
優鈴が、急にそんなことを言い始めたので思わず息をのんだ。
「生きてたらたくさんの人に迷惑をかけてしまうって。僕がいることで、どんなに良い人でも僕を指さして笑うから。……前世ではそうだったんだ。
鬼殺隊に入る、ずっと前の話だよ。には一度言ったかな。僕が生まれた場所はそんなところだったんだ。」
…優鈴の素性はあまり知らない。鬼殺隊に入る前どこにいたのか、
ただ、出身地が差別のひどい地域だったとは記憶している。全て大正時代での話だ。けれど、それは彼の胸に深く残っているらしかった。
「みんな僕を鬼の子って言うんだ。誰も寄り付かなかったよ。変なものが見えてるから、母さんもろとも村八分にされてたんだ。」
心の底から悲しんでいるのが伝わってきた。
私は何も話さず、ただ彼の声に耳を澄ませていた。