第23章 時を超えた告白
質問は学園の生徒から寄せられたものだった。ヘンテコなものもあったが、優鈴はそつなく答えていた。
優鈴の顔は中庭に用意されたスクリーンに映し出されていたが、そこにうつる彼がにこりともしないので、司会の子がわかりやすく焦っていた。
「…ああもう、ちょっとは相手のこと考えないとダメじゃん!」
「あの人に気の利いたことを求めたって無駄だろ。」
確かに先輩の言う通りだ。
けど見ていてもどかしい…!
『ええっと、次の質問ですね!……あ、どうして書道家になったのか、ということですがどうでしょうか!』
『……楽しいからかなあ。…文字を書いてると、余計なこと考えなくていいし…。』
さっきからずっとこんな感じだった。たどたどしい感じをお客さんは笑いながら見ていて場の雰囲気は明るいけど、普段の優鈴を知っている身としては辛い……もっとすらすら話せるでしょうあんた!!
『ああ、あと。』
その時優鈴の表情が変わった。
ふにゃっと笑った。
すると、一部の女子からの黄色い声援が上がった。ハルナちゃんもきゃあと声をあげる。
『想いを伝えられるから、かな。話しててわかるかと思うけど僕口下手だし。こう言うのが向いてるんだ。』
『はあ!そうなんですね!!』
司会の子がほっとしたように声を出す。
ああよかった。やっと笑った。どうやら場に慣れて来たらしくそこからはニコニコと質問に答えていた。
「なんだ、やっぱ緊張してたんだ。」
「…そうみたいですね。」
本当にそれだけだといいけど。
『では!これからいよいよパフォーマンスをしていただきますが、テーマを教えていただけますか?』
私の不安とは関係なくステージが進んでいく。
『テーマ…えーと、非常に申し訳ないんですけど、今から打ち合わせと違うこと言います。』
『え?』
『さっきそこ歩いてる時にいいやつ思いついたので。』
このやり取りにたまらず会場に笑い声が響く。
「おいおい、あの人正気か?それってぶっつけ本番ってことだろ?」
先輩が言うが、私は優鈴に期待していた。
…あの顔は、何かを決意した顔だ。
それがわかったので、私はただ黙ってステージに見入った。