第22章 それぞれの学園祭
何も進展しないまま、陽明くんと分かれた。
「意味がわからん。あいつは死ぬ気か?」
「…でも、タダでやられるつもりはありませんって感じだったよね。」
それに、阿国のこと。
彼は阿国を特別気にかけているみたいだった。それは妹だからだろう。多分、彼の揺るぎない決意を鈍らせているのは阿国の存在だ。
阿国には、彼を動かすだけの存在感がある。彼は恐れているはずだ。再び、阿国の想いが暴走することを。
「お前はどうするんだ。お前は明日、霞守の言っていた通りに動くのか?」
「うん。そのつもり。」
「…そうか。」
愈史郎さんは顔をしかめた。
「明日、生徒は自由に動けない。書道パフォーマンスは決められた場所で見ることになっている。珠世様は保健室から動くことができないし…お前一人で動くことになってしまうぞ。」
「平気よ。何があるかわからないけど…。悩んでもしょうがないしね。」
「…はあ、お前のそういうところ変わらないな。行動してから後悔しても遅いんだからな。」
「そうだね。でも、行動しないことで後悔したくないの。」
愈史郎さんがため息をついた。
「これは考え方の問題だな。俺はもっと後先考えろと思ってしまうが、お前のそういうところに助けられたのも確かだ。」
「えへ」
「褒めてないぞ。じゃあ今日は終わりにするか。」
少しだけ進歩が見えた二日目で、そこで終わりを迎えた。
しかし、私の知らないところでかなりまずいことが起きていたことを知るのは、夜に実弥が帰ってきた時だった。