第22章 それぞれの学園祭
「お前、今日学園祭来てたのか?」
「へ?」
実弥にそう聞かれたのはご飯も食べてお風呂も入ってもう寝ようかという時だった。思い出したように実弥はそう聞いてきたのだ。
「玄弥がお前を見たって言ってたんだよ。」
「げん、や、くん…?」
あ、待って。そういえばかぼす組とか言ってなかったっけ。筍組の隣のクラスだ…!!
しまった!!見られてたのか!!!!!
「…まあ、そんなわけないよな。」
実弥はふわあ、とあくびをこぼす。
無言でオドオドしていただけなのだが、どうやらそれが彼には心当たりがなくて困っているように見えたらしい。
「あっ、ああ、でも明日は行くよ。優鈴がチケットくれたから……。」
「そうか。行き帰りは気をつけろよ。」
またあくびをこぼす。どうやら疲れているらしい。
「眠いなら布団行きなよ。」
「…ん。」
と言いながらもぎゅうっと抱きついてくる。
「おやすみ」
「おやすみ〜」
体が離れていくと寂しい気もしたが、実弥は疲れているからしょうがないと我慢した。
その日、少しだけ夢を見た。
誰かが泣いていた。誰かはわからない。
けれど、泣き声が耳にのこった。
その人はずっと泣いていた。
私はただ見ているだけだった。
ぼんやりその人の輪郭が見えた。泣いているのは、幼い男の子だとわかった。背中に滅の文字が見えた。
長い髪が特徴的だった。
その子は泣きながら何か文字が書かれた紙を手に持っていた。
『師範』
確かにそう聞こえた。
手紙に何が書いてあるのだろう。もう私にはわからない。何が書かれているか、わからない。
『師範』
小さな背中に溢れんばかりの悲しみが感じられた。
ああ、これは。
この子は。
無一郎くんだ。