第22章 それぞれの学園祭
この人だと教室に入ることもできないし陽明くんに近づくこともできない。二人でどうしようかと悩んでいるうちに…。
「あれ?この匂い、もしかしてさん?」
名前を呼ばれてギョッとして振り返る。
「…炭治郎くん?」
「炭治郎」
愈史郎さんと声が重なる。
「あ!愈史郎くんも来てくれたんだ〜。ありがとう!嬉しいなあ。」
「もしかして、炭治郎くんって筍組?」
「はい!善逸と伊之助も一緒のクラスですよ。」
随分と懐かしい名前に思わず笑ってしまう。
「そっか。みんな一緒なのね。」
「はい…って、うちのクラスすごい人気ですね。…霞守くんのおかげかな。」
「その霞守はいつ外に出てくるんだ?」
炭治郎くんは珠世さん達と一緒にいた私を知っているから、はたからみたらアンバランスなこの組み合わせを怪しいとも思わないようだ。
話が進みやすくて助かる。
「もうすぐ善逸と交代だよ。用があるの?」
「学園一の人気者と話してみたいからな。」
「いい子だよ。霞守くん。本当に優しいんだ。いつもあたたかい匂いがする。」
炭治郎くんがにこりと笑った。そうこうしているうちに霞守くんが動く。
「あ、終わったみたいですよ。」
「だな。じゃあ行ってくる。」
「またね、炭治郎くん。」
彼に手を振って教室から出る霞守くんに声をかけようとした。しかし、彼はテクテクと私たちの方へ歩いてくる。
ちょうどいい、と思って彼と向き合った時、陽明くんは驚くべきことを口にした。
「お待たせ。じゃあ、お話ししましょうか?山本愈史郎くん。…そして、霧雨さん。」
名乗ってもいないのに私たちの名前をフルネームで読んだ彼はふふっと微笑んだ。