第22章 それぞれの学園祭
次は霞守陽明。兄に会いに行く。
しかし、私は一度も会ったことがない。
「どんな子なの?」
「イケメンな上に学校一勉強ができる…だが、素行が悪いと有名だ。俺も直接話したことはない。」
「そうなんだ。」
素行が悪い、と聞いて思い浮かんだのは宇髄先輩のようなヤンキー系。どうしよう、会った瞬間睨まれたりしないかな。
ドキドキしながら彼がいるという筍組を覗き込む。クラスの出し物は…。
「フリーマーケット、か。」
うんうん。クラスで売れそうなものを集めて売るやつだ。やってたクラスあったなあ…懐かしい。
「随分繁盛してるんだな。」
愈史郎さんの言う通り、教室の前には長蛇の列ができていた。その理由は…
「えっ何あの美少年」
レジで精算をしていたのは天界から舞い降りてきたような、欠点なんて何一つない顔の男子生徒だったのだ。
老若男女、関係なく彼に惚れ惚れしているのがわかる。
「あいつが霞守陽明だ。この人気、噂通りだな。」
「わあ…。」
思わず私もうっとりしてしまう。彼が客の対応をしている様子に見入る。
どうやら今は高等部の女子生徒の対応をしているようだ。
「はい、お釣りが530円ね。」
「あ、ありがとうございます…!あ、あの、先輩のこと格好良いってみんなでいつも話してるんです。今日来れて良かったです…。」
「あはは、本当?そんな嬉しいこと言ってくれるの?ありがとう。また来てね。」
女子生徒はキャアキャア声をあげて教室から出ていく。次にレジに来たのはは杖をついてゆっくり歩くおばあさんだった。
「わあ、たくさん買ってくれたんですねぇ。重くて大変だろうから袋分けますよ。」
「まあ…ありがとう。優しいのねえ。」
「やだなあ、そんなこと言われると恥ずかしくてお金間違えちゃいますよ。」
……。
「何あの百点満点の美少年…!接客も神対応じゃんか!!あんなの誰でも惚れるよ…!!??」
「だからモテるんだろう。まあ、あの見た目だけは好かんが。」
愈史郎さんがそう言うので、よく見てみると髪の毛に寝癖がついていたり制服のシャツの上のボタンが開いていたり、ちょっとだらしなかった。
「え…まさかのギャップ」
「…お前は単純すぎる」
愈史郎さんがため息をつき、頭を抱えた。