第22章 それぞれの学園祭
ひとまず阿国の教室へ向かう。誰の視界にも入らないように…と思ったがここはお化け屋敷。脅かし役の子以外には会わない。
阿国は裏方で衣装制作係だったらしく、クラスの控え室で一人ぽつんと座っていた。
「霞守!!」
「うわっ!」
その教室の扉を愈史郎さんが躊躇いもなく開けた。阿国は叫び声をあげて振り返った。
「やっ、山本くん!?それと…誰?」
阿国が首を傾げるので帽子を取った。入れ込んでいた髪が静かに落ちる。
「え!?!?」
「?知り合いだったのか」
「……うん」
話していると時間がかかるのでそこは黙っておいた。阿国も話す気配がなかったのでホッとする。
「え?え?何で二人が一緒にいるの?」
「昔からの知り合いなんだ。」
いや君いま十数年しか生きてないのに何が昔よ。
「霞守、最近何かあったか。」
「何か…って?」
「変わったこととか。」
阿国は首を傾げた。
「お前学校に来てないだろ。何かあったりしてないか。」
不登校気味とは言っていたけど、そんな子にこの言い方はまずいのではないか。私も中学校の時学校に行けなくなったから気持ちはわかる。
「な、何もないよ…。学校に行けないのは…その、具合が悪くって…。」
「本当か?神社に変な奴がいるとかないか?」
「へえ?神社?あ、そっち?」
自分の心配をされていると思っていたのに急に神社の話になり、阿国は驚いていた。
……愈史郎さん、話下手くそか!!!
「神社のことはパパ…じゃなくて、お父さんしかわかんないと思う。あー…でも、兄さんならわかるのかな。」
「そうか。お前は特に何も感じないんだな?」
「うん。」
愈史郎さんはそこで私に視線を投げた。
「ありがとう、阿国。急にごめんね?」
「いいけど…どうしてあなた山本くんと一緒にいるの?しかも変なことばっかり聞いてくるし。神社に何かあったの?」
「ただの知り合いよ。昔からのね。愈史郎さんは阿国が心配なだけよ。」
「…そんなに話したこともないんだけど。」
阿国は疑わしそうに目を細めた。これ以上何か言われたら困るので、私たちは適当に誤魔化して教室から出た。