第22章 それぞれの学園祭
学園祭二日目。
「変装はもうしないからね。」
愈史郎さんに言うと、彼は頷いた。
「記念に写真撮ったから良かったらやるよ。」
「え、究極いらないんだけど。ていうかいつ撮った??」
本当に送ってきたのでマジで殴ってやろうかと思った。
「スパイが見つかった今、俺たちにできることはない。ただ今日は厄介なことが起きた。」
「厄介?」
「珍しいことに霞守が学校に来ている。兄と妹、二人ともな。」
そう言われてハッとする。
…無惨の狙いは霞守の一族。あの二人は絶対に狙われる。スパイのいるこの学園にいるのは非常にまずい。
「……学校に来てるだけなのに、何で危険にさらされないといけないんだろうね。」
「こればかりは仕方のないことだ。」
「愈史郎さんだって、本当なら学園祭を楽しんでるはずなのに…!」
怒りがおさまらず、ぎゅっと拳を握りしめる。
「……言うな。本当なら、は鬼に殺された人間全員に対しても言えてしまうことだ。それはもちろんお前にも言える。本当ならお前は学園祭に来る必要なんてなかった。俺と再び関わることもなかった。」
「…愈史郎さん」
「考えるな。悪いのは無惨だ。それ以外のことは考えるな。」
前世では年上だった人とはいえ中学生にそう諭され、少し情けなくなる。けれどその言葉で元気が出たのも確かだ。
「どうする。霞守のところに行くか?」
「…そうだね。……行ってみよう。」
「妹の阿国なら同じクラスだ。」
…てことは魔法使いの格好してるのか。
ん?
「ちょっと待って。そのクラス、もしかして。」
「は?」
……。
中等部には時透兄弟がいる。遭遇したらまずい。いやまずいどころではない。
「…会いたくない子がいるから、私は待機してるよ…愈史郎さん様子見て来てくれる?」
「は?この緊急時に何を言ってるんだ。アホか。」
はいその通りです。
まあ…昨日ほどではなくけどバレないように変装はしてるし大丈夫か…?