第22章 それぞれの学園祭
あの二人は無限城にいた鬼だ。
男子高校生は獪岳。教頭は鳴女。上弦だったはず。
二人は少しだけ話してわかれたが、怪しいことに変わりはない。というか、上弦が現れた時点でスパイは確定だ。
ひとまず愈史郎さんとその場から離れた。二人で衣装を着替えて珠世さんのいる職員室へ向かう。
とりあえず、スパイがわかったことを報告した。
「…そうですか。教頭先生と彼が。…確か、高等部三年生の生徒ですね。」
愈史郎さんと珠世さんはあの二人のことを覚えてはいないらしい。無理に辛い思い出を思い出すこともないだろうと思い、あの二人が元上弦ということは黙っておいた。
「スパイと言っても、何をしてるんでしょう?」
「わかりません。ただ、教師側と生徒側にスパイがいるということは学園の情報が無惨に全て伝わっているかもしれません。」
「…時すでに遅し、か。さすがにあの二人をいきなり排除することはできないでしょうし。」
私たちはしばらく考え込んだ。
「スパイってことがもうバレてると言ってやれば学園から出ていくんじゃないか?」
「…一理あるかもね。でも難しいんじゃない。言ったら標的を私たち三人にするだろうし。また無惨から逃げるためにコソコソしないといけなくなるよ。」
「…だが、何もしないと言うのもな。」
愈史郎さんは顔をしかめた。
「そういえば、産屋敷家は何か動いているんですか?」
「わかりません。ただ、無惨から学園長に対してそれなりの嫌がらせはあるようです。」
「それなり、ですか。」
ということは被害はあるみたいだな…。
「動くのも時間の問題かと思います。私は表向きでは記憶がないということにしているので、こちらに目が向くことはなでしょうけど…。」
「…元鬼殺隊が、ってことですよね。」
「はい。」
だろうな。動かない方がおかしい。無惨のことはかなり有名になりつつある。みんな存在は知っているはずだ。
そうなる前に、せめて一度でも無惨にコンタクトを取りたい。あいつに説得なんてできないとわかっているが…。