第22章 それぞれの学園祭
愈史郎さんが背を向けている間に着替える。
…もう…もうどうにでもなればいい。
「キガエマシタ」
「ん」
愈史郎さんが振り向く。
「いいんじゃないか」
「私25歳なのにっ!!」
わあっと喚く。
それもそのはず。
「なんでメイド服なの!?」
そう。私が来たのは白と黒を基調としたフリルがたくさんあしらわれたメイド服。年齢を考慮してくれたのかミニスカ丈ではないが、普段身につけるよりも短くて落ち着かない。スースーする。
「贅沢を言うな。25歳のお前でも着れるものがこれしかなかったのも事実だ。まさか制服を着るとか言わないよな?」
「うっ!確かに!!25歳のリアルメイドさんもいるけど!!いるけどさああ!!!」
ああああああ何これ。魔法使いとメイドのコンビとか意味わかんない。
「あとヘアアイロンとか化粧品を珠世様が用意してくださった。その地味な化粧じゃすぐにバレるからな。これを適当に使え。」
「ねえちょくちょくディスるのやめてくれない!?」
私はため息をついて彼が差し出すそれを受け取った。あまり気は向かないがしょうがない。
「…一応、元メイド喫茶の店員なんだよね…私……。こうなったら本気見せてやるんだから!!」
大学時代にスカウトされてそれから大学の四年間働いていたことがある。実弥には言わなかったけどね!!
と、言うわけで学生時代(四年以上前)を思い出してヘアセットとメイクを終える。
「これでどうだ!!」
興味なさそうに窓の外を眺めていた彼がギョッとする。
「誰だお前」
待て。リアルにその発言は傷つく。
「それじゃ行きましょう!ご主人様!」
「次そう呼んだら許さんぞ」
と、言うわけで25歳のメイドコスプレ女と中学生が校舎を練り歩くのでした。あはは。今日はなんていい日なんだろう。