第22章 それぞれの学園祭
学園祭中は騒がしい。人で溢れかえっている。
久しぶりに母校に足を踏み入れたが何も変わっていなかった。懐かしさに顔が緩む。
…できることなら、こんな形で戻りたくはなかったな。
ええと、ひとまずは愈史郎さんの教室に行って彼と合流する…ってことになってるんだよね。
中等部の校舎まで足を進め、彼の教室のドアから顔を覗かせた。
「来たか」
探すまでもなく彼は姿を見せた。珍しい服を着ている彼に目を見開く。
「それって何の格好?」
「うちは男女強制で魔法使いのコスプレをさせられる。…一応お化け屋敷だ。入っていくか?」
教室の入り口にはデカデカと『恐怖!!魔法使いの呪い!!』とおどろおどろしい文字で書かれていた。
「……遠慮しておくよ。」
尖った帽子に長いローブ。下に着ているのは普通に制服。全身真っ黒。
……こういう服、愈史郎さんが着ると似合うな。
「よし、じゃあ行こう。」
「え?その格好のまま?私と動いてると目立つんじゃない?」
「手は打ってある。」
彼は私にそう言った。
中等部の校舎には空き教室がいくつかある。その中には学園祭で使われない、人が一人もいないものもある。
「お前は生徒のふりをしろ。」
「えっ。」
「生徒でもないお前が堂々と歩いていると目立つ。学園の生徒ではないと入れない場所もあるからな。衣装は用意してある。」
愈史郎さんはローブの下から隠していた紙袋を出した。
「待って!?私25歳だよ!?絶対バレるって!!!」
「そんなおばさんくさい格好をしてるから老けて見えるんだ。」
「おばっ…」
「幼顔をしているんだからバレないだろ。高等部だと言えばいい。」
「無理あるでしょ!私が高校生だったの8年、9年とか前だよ!?」
彼は私の訴えを聞き入れず、私に服を差し出した。
「これを着ろ。俺と行動していて何か言われたら部活の先輩だと言えばいい。」
「ええ〜…愈史郎さんって何部なの?」
「伝統部だ」
「えっ。昔からずっと廃部寸前と言われ続け、なおかつ何をしているのか全くわからないあの…?」
「伝統部のやつなんて誰も知らない。疑われないだろ。いいから早く着替えろ。」
さすが…というか、用意周到だな。
私はありがたくその衣装を受け取ったが、それを見て硬直した。