第22章 それぞれの学園祭
さあ。色々とゴタゴタしたけど。
いよいよ今日からキメツ学園祭が始まる。
「じゃあ、今日からちょっと帰り遅くなるから。」
教師である実弥は出かける前にそう言った。
「うん。頑張ってね。」
ひらひらと手を振って見送る。
…よし。
実弥の気配が遠ざかる中、私は準備をすすめた。学園祭に行くことは実弥に言ってない。
卒業してからほとんど顔を出してないのに、急に行くと言えば怪しまれると思ったからだ。バレた時はバレた時だろう。もう覚悟は決めた。
学園に潜むスパイを見つけ出さないと。
最終日に行われる優鈴の書道パフォーマンス。最終日だけは入場制限がかけられる。入るためにチケットが必要になるのだ。しかし、それを私はすでに3枚持っている。
優鈴は祖父母を誘えばいい、と言って渡してくれたが正直気が向かない。学園に二人を呼ぶのは危険だ。何かあった時、守れる保証がない。
もったいないけどあの2枚はなかったことにする。最終日は私一人で行くつもりだ。1日目と2日目は入場に制限はない。だから、この二日間でスパイを見つける。
そして、最終日に叩く。
入場制限がかけられるのはラッキーだと愈史郎さんは言っていた。無惨やスパイを見つけやすいし、私も動きやすくなる。
…とにかく、気合を入れないとな。
私は動きやすい服に着替えた。学園には知り合いが多いので、何かあってもバレないように多少の変装はしていこう。
「これなら誰かわかんないでしょ!!」
鏡に映る私は偽物のメガネをかけて、髪の毛を帽子にしまっていた。服も普段は着ないタイプで目立たない地味めな色。
体力は戻ったけど一日ずっと外にいると思うと今から不安だ。でも杖を持ってると実弥にバレるし…。ううん、今からそんなこと言ってられない!何かあったら保健室で珠世さんに休ませてもらお!
私は意気揚々とドアを開けた。
もうすぐ夏も終わるという季節の中、私は一歩外に足を踏み出した。