第21章 籠の中
その時、実弥の部屋のドアが開いた。
当然中から部屋の主が出てくる。
絶対怒鳴られる。
最初の一撃が恐ろしすぎたので静かに目をそらした。
「おかえり」
「え」
しかし、彼から発せられたのは普通の言葉だった。
「…今起きた」
「え」
実弥はパジャマのまま、ガシガシと寝癖のついた髪を乱暴にかいている。
「ええええええええええまさかのずーーーっと寝てた!?もう夜なんだけど!?!?!?」
「……俺が一番驚いてる…学生以来だ、こんな寝たの…」
実弥がふふふ、と不気味に笑う。
「疲れはとれた?」
私が聞くと、彼はキョトンとしていた。
「チッ、お前に感づかれたら終わりだな」
「はい?今ディスられた??」
「あー、すこぶる良い気分だよ。ったく。」
実弥は機嫌がいいのか悪いのかわからないことを言ってそのままリビングまで歩いてきた。
とりあえず、出かける際にテーブルに残した置き手紙を回収しておく。今日のことは黙っておけばバレないだろう。
「とりあえず、君が好きそうなものを買ってきた。…一緒に食べる?」
「ん。」
起きたてでお腹が空かないだろうから、今晩は和菓子でいいか。
たまにはこういうのも悪くないだろう。想定以上にたくさんのものを買ってしまったし。
「おはぎは」
「あるよ〜」
寝癖をつけたまま実弥がガサガサと袋の中を漁る。その足元でおはぎが足に擦り寄っていた。
「おはぎっつってもな…お前のことじゃねえんだよォ」
実弥がため息をつきながら見下ろす。
あまりにもそのやりとりが可愛かったので、思わずスマホを構えてムービーを撮ってしまった。