第21章 籠の中
ということで、実弥は夜になっても元気だったがクタクタの私は眠たくてたまらなかった。ソファーでテレビを見ながらうとうとしていると、実弥が肩を叩いた。
「ここで寝るなよ」
「…わかってる」
ゴシゴシと目を擦る。その間に実弥がぎゅう、と抱きついてくる。
「うわ、何…?」
「今日は何もないのか?」
何を言ってるのか察した私はじとっと実弥を睨んだ。
「ないよ。」
「…そうか」
しゅん、と落ち込む様子に胸が締め付けられる。
「……ねえ、何か最近ズルくない??」
「何が?」
実弥はにこりと笑う。わあ爽やかな笑顔。
「わかってやってるんでしょ!その顔!」
「何がァ?」
「絶対確信犯!!」
私の扱い方うますぎじゃない!?そんな顔されたら弱いよ!?
「で?どうする?」
「!!っ、!!」
実弥の顔が近づいて、何も言えずにただパクパクと口を動かす。
「無理」
顔が近くて恥ずかしすぎたので、思わず両手で顔を隠した。そんな私を見て実弥がふっと吹き出す。
「いつも自分からくっついてくるくせに俺がくっつくと照れんのな。」
「私はいいの!実弥はダメなの!」
「あ?別に俺だって…。」
「ダメー!」
プイッと明後日の方向に顔を逸らすと、実弥はまた吹き出した。
「そんなに言うな。ほら、こっち向けって。」
「…むむ。私がくっつくと『うざい』、『離れろ』って言うくせに。」
「それはお前がその場のノリと悪ふざけでやってるからだよ。」
ど正論を返されて何も言えなくなってしまった。
このまま黙るのは悔しいので意地になって幼稚園児のような返しをした。
「実弥のバカ!」
「お前もバカだ。」
「ちょ、さ、触るな…!」
実弥の手がもぞもぞと動く。
「…っ、ば、バカ…!」
「…お前からへんな匂いがする」
「え?臭い??」
「違う」
実弥は不機嫌そうに目を細めた。
「男の匂い」
………
まあ〜確かに…公園で縁壱さんと冨岡くんと距離近かったかも…?けどそんなんで気づくとかコイツ犬かよ。
彼は私の耳元で囁いた。
「俺だけ見てろ」
そこらへんから見事に記憶がない。結局、はっと気がつけば私たちは狭いソファーの上で朝を迎えた。
黙ってお出かけしたことはどうやらバレていたみたいです。