第21章 籠の中
話そうと思えばいつまででも話が続きそうだったので、日が暮れる前に神社を出ることにした。
阿国と縁壱さんは連絡先を交換し合って、続きはまた今度という話になった。流れで私にも連絡先を教えてくれた。
「何かあれば…頼りになるかわかりませんが。」
縁壱さんはそう言ってくれた。
さて、ノロノロと動くわけにもいかない。阿国はまだ中学生だし、縁壱さんには家庭がある。…私も帰らないといけない。
「あなた、そんなに急いでどうしたのよ」
阿国が帰り際、駆け足で境内を進む私に阿国が言った。
「和菓子屋が閉まる前に寄らないといけないの!!!」
鬼気迫る迫力でそう言う私を、阿国は首を傾げて見送った。縁壱さんへの挨拶もそこそこに最寄り駅近くの和菓子屋へと飛び込んだ。
肩で息をする私を見て顔見知りの店主さんがギョッとしていた。
「どうしたんだい、そんなに慌てて」
「はあ、っ、お、おはぎ、残ってますか……できればあんこが良いんですけど」
「あ、ああ、いつものね、三つ残ってるよ」
「じゃあ、それ残ってるの全部とぉ……大福二つ…お団子もあるだけお願いします」
「そんなにかい」
店主さんは大声で笑った。喧嘩するたびにおはぎを買いに来ることはもう知られていることだった。
「今度は何をしたんだい?」
「内緒です。」
「はははっ、喧嘩してくれるのはいいよ。うちが儲かる。」
店主さんは陽気に笑った。大量の和菓子をビニールにつめてもらって、運動不足解消のために歩いて帰った。
そんなことをしたので家に帰る頃にはもうヘトヘトだった。
「ただいまーーー…」
絶対怒ってると思ってコソコソと家に入ると、中はしんとしていた。もう火が沈むというのに電気さえついていない。