第21章 籠の中
阿国は縁壱さんに会えたことが嬉しくてたまらないようだった。世間話や自分の話を夢中になって話していた。
「今はね、ママとパパと兄さんと一緒に暮らしてるんです。縁壱さんは?」
「私は妻と息子と三人で。小さな家で暮らしている。」
「わあ、素敵。」
その様子を見ていると微笑ましかった。お邪魔かと思ってこの場から出て行こうとしたのだが、二人がぜひいてくれと言うのでここに留まっている。
…多分、急に二人きりになって話すのは気が向かないんだろうな。
「二人とも、本当に仲が良いのですね。見ていて微笑ましいです。」
「えへへ。阿国は縁壱さんのこと大好きだもん。」
「…昔からよく慕っていてくれるんです。」
見つめ合ってにこりと微笑む二人。気持ちが痛いほど伝わってきて、見ていると心が暖かくなる。
「もう離れないでくださいね。」
二人はまた微笑んだ。
戦国時代に離れ離れになった二人がこうして再会したと思うと、嬉しくてたまらない。
これから、幸せな時間を過ごしてほしいと願わずにはいられない。
「不思議な縁です。たまたまあなたと会っただけなのに、阿国に出会うことができた。」
「はたくさん良いことをしてきたから、巡り巡って自分の幸せに返ってきてるのかもしれません。情けは人のためならずってやつ?」
「…?それ、ちょっと意味が違うんじゃない?優しくしても誰かのためにならないってことでしょ?」
「ううん。情けは人のためだけじゃなくて、情けをかけた自分の元に返ってくるってことよ。」
へえ。そうなんだ。
中学生に教えられるなんて恥ずかしい。すみませんもっと勉強します。
「それに、言われるほど良いことなんてしてないし…」
「あなたは立派にたくさんの人を助けて来たでしょう?あなたは素敵な人よ。」
「…そ。そんなに褒められるような人間ではないよ……。」
思わず下を向いてしまう。
それは鬼殺隊に入隊してからだ。それより前は、とんでもない人間だった。阿国はその頃の私を知らないだけだ。
きっと、知ったらこの子も私を嫌ってしまう。
そんな臆病な心から、彼女には何も言えないままでいた。