第21章 籠の中
「元気だったか」
縁壱さんの表情が変わった。ほんの少しの変化だったが、にこりと笑っていた。
「…うん」
阿国は泣きそうな顔で答えた。縁壱さんが彼女の隣に腰かけたので、私はまたその隣に座った。
「どうして縁壱さんはここまで来られたんですか?…ていうか、も何でいるの?」
「…実はですね。」
ここに来るまでの経緯を話すと、阿国は頭を抱えていた。
「何でこう、あなたは何も考えないのよ!!」
「お、怒らないで〜ごめんって〜!!」
中学生に怒られてしまった。必死にぺこぺこと頭を下げる。
「何も考えないくせにどうして公園でばったり縁壱さんと会うとか奇跡があなたに起きるのよ!?ひどいわ!!ずるい!!」
「え、何で怒られてるの私」
「いきなり縁壱さんを連れてくるなんて…!!」
阿国はふるふると肩を震わせた。
「あ、あの、ごめんね?でもさ、私じゃ話せないこともあるし…。」
「…もう」
怒っていたかと思えば次はモジモジとしだした。
…こう見てると普通の女の子なんだけどな。表情がころころ変わる、感情豊かな子供だ。
「……縁壱さん来るなら、もっとちゃんとしたのになぁ。」
阿国は着ている服を恥ずかしそうに見下ろした。
「?かわいい服じゃん」
「もっとかわいい服あるもん!」
そう言ってむくれる姿はとても可愛らしい。……ただ、自分とそっくりな顔をした女の子がそうしてると違和感がある。
「…何だろうと阿国はかわいいが」
「や、やだもう、縁壱さんったら!!」
阿国はポッと頬を赤く染める。
「……で、でも、本当に縁壱さんが会いに来てくれたなんて夢みたい。」
そして頬をつねって夢ではないかと確認をし始めるので、そのかわいらしさに思わず笑ってしまった。