第20章 驚きの連続
どう見ても私と同い年かそれ以下かにしか見えないんですけど…。ずいぶん若いママなんだな。
「まあ、今日はあなたたちが来てくれたの。阿国は幸せねえ。」
「…あ、あのぅ」
「お姉ちゃんは元気かしら。」
「???」
縁壱さんと顔を見合わせる。話が通じている気がしなかった。
「ほら、ママが阿国のところに連れて行ってあげる。」
急に私の手をガシッと掴んで切るので振り払おうとしたが、縁壱さんが一歩前に出た。
「ぜひ。」
「は〜い、行きましょ、行きましょ。」
その人は私の手を握ったままスキップのような軽い足取りで神社の中へ進んでいった。
え。えええええ。
待って何この展開。
「阿国はね、最近元気がないの。」
戸惑う私に関心がないのか彼女は勝手に話し始める。
「いっつもねぇ、ママに怒鳴るの。ママに頭がおかしいって言うのよぉ〜。阿国はお兄ちゃんにべったりなの。でもね、お兄ちゃんはママのなのよ。」
話している内容もさっぱり意味がわからないが、どうも気持ちのいい話ではないことがわかった。
…もしかして、阿国って母親とうまくいってない?
「お兄ちゃん…って言うのは、どんな子なんですか。」
試しに聞くと、彼女は急に目を爛々と輝かせて意気揚々と語り出した。
「とおっても良い子なのよぉ。何でもできる子なの。私の子。希望の子。」
「……そうなんですか。」
「でもね、その希望は私にはどうにもできないのよ。」
急に声が低くなった。
冷たい声にゾッとする。私を掴んで離さない手がどんどん力を強めていく。
「人間から神様は生まれないもの。あの子は人間じゃないの。あの子たちはママを見下しているんだわ。」
これには縁壱さんも黙り込む。
ヒリヒリと痛む腕はまだはなしてもらえそうにもない。
阿国の母親は、ズンズンと大股で神社の奥へと進んでいった。一般の参拝客はもう入れない場所まで来ている。
緊張感が高まる。植物のように不動の心を持つ縁壱さんも、少しばかりは緊張していた。