第20章 驚きの連続
道中会話がなかった。電車を使って移動したのだが、本当に気配がつかめない。
電車から降りた時にふらっといなくなったので慌ててあたりを見渡したら、体が大きいおかげで無事に見つけることができた。
「何してたんですか!」
聞くと、彼はスッと何かを差し出した。それはカラカラと音を立てた。
「…風車?」
「そこで」
彼が指さした先には、屋台があった。子供向けに駄菓子やらおもちゃやらを売っているようだ。…ああ、私が小さい時からあるやつだ……。
「阿国が好きだったんだ」
……阿国、今は中学生なんだけどな。いや、野暮なことは言わないでおこう。
それきり彼は話さなくなってしまって、無言のまま神社まで歩いた。
そのおかげなのか、神社にはすぐに着いた。
縁壱さんの兄、黒死牟。阿国の師であった。そして、人間としての私を殺した鬼。
「霞守神社」
神社の鳥居に書かれている文字を縁壱が淡々と読み上げた。
「初めて来ました。私の暮らしているところから遠いので。」
「…そうですか。」
「……阿国はここに?」
………。
ん?
待って。神社の娘ってことは知ってるけど、神社を運営してる人たちって神社に住んでるの??
やっば。完璧にノープランだった。
え。どうしようどうしよう。待ってこれでいなかったら私この人をここまで連れてきた意味ないんですけど。
私がパニックに陥りそうになった時、ふと誰かの気配がした。
ハッとして私は振り返った。縁壱さんも気づいたらしい。彼も振り返った。
「いるわよぉ」
そこにいたのは女の人で、ふわっとした雰囲気をまとっていた。着ている服も少し変わっていて、真っ白のロングワンピースが特徴的だった。
それなのに、百人いたら百人が振り返って追いかけるほどの美しい容姿の持ち主だった。同性の私もたまらず目を止めてしまった。
どことなく浮世離れした人だった。
「え?」
「…誰ですか?」
「い、いや…知りません」
その人はにこりと笑った。
「わたしぃ、阿国のママで〜す。」
おっとりとした甲高い声が耳に触った。
思わぬ人物の突然の登場に驚く。しばらくポカンとしていたがその言葉を理解した瞬間、口から心臓が飛び出るかと思った。