第20章 驚きの連続
「しかし、前世では頼りがいのあるやつだと思っていたが現世では随分とナヨナヨしているようだな。」
愈史郎さんの毒舌は生まれ変わってもなおらなかったか…。
「色々あったんです。」
そう答えて適当に誤魔化しておいた。
「それで、無惨のことですけど…私を呼んだってことは、お二人はもう動いてるんですか?」
「ええ。無惨の動きを常に追って監視しています。…ですが、その調査の中で分かったことがあってそれが厄介なのです。」
「…というと?」
珠世さんは前世と変わらない瞳で私を見つめた。
…学生の時から変わらないな、この人。それに恐ろしいほど美人だ。愈史郎さんみたく盲目になる気持ちも心底わかる。
珠世さんは学生時代にとてもお世話になった。…こんな形で再会したくなかったな。
「無惨は学園にスパイを送り込んでいます。」
「……なるほど。相変わらずの狡猾さですね。人数はわかりますか。」
「いえ…まだそこまでは。」
私はぐっと拳を握りしめた。
…もうあいつの手が回っているとは。
「私は少しだけ無惨と話す機会がありました。」
「!!」
「本当か!!」
愈史郎さんが立ち上がり、大きな声を出すのでその場にいた人たちの視線が一気に集まった。
慌てて愈史郎さんが席に座り直す。
「何をどうすればそんなことになるんだ!」
「…色々あったの」
そうとしか言いようがなかった。本当のことを話すと長くなる。
「まさか貴様、無惨と通じているわけではないよな!?」
愈史郎さんがそう言った瞬間、店の中がシンと静まり返った。
原因は私だ。
さっきまで強気だった愈史郎さんが冷や汗を流している。
「私が?」
いつもよりもうわずった声だった。
「私が、何だって?」
目の前が真っ赤になったような錯覚に陥った。
「す…すま、ない……悪かった…」
「…もう言わないでくださいね」
青い顔で謝る愈史郎さんに一気に頭が冷えた。
「あいつの仲間だなんて言われたら、冗談でも許せませんから。」
ほんのジョークのつもりで言ったのだが、愈史郎さんも珠世さんも青い顔をしていた。