第19章 鬼殺隊の次は
静かだった空気が少しだけ明るくなった。
その時桜くんがチラリと時計を見て言った。
「霧雨さん、今日泊めてよ」
「うんいいよー」
「いい訳あるか!!!!!」
桜くんの申し出に二つ返事でオーケーすると実弥がすぐに抗議してきた。
「うん?何??」
「何じゃねえ!桜は帰らせればいいだろうが!!」
「え、不死川さん怒ってる怖いよう」
「お、おお、よしよし」
わざとらしくグスンと言って桜くんは甘えるようにぎゅーっと抱きついてくるので背中を撫でてあげた。
……珍しいな。桜くんがこう言うことするの。
「おまっ……離れろ!!」
「そんなプリプリしなくてもいいじゃん。ハカマくんはみ〜んなの弟みたいなもんだよ。」
「ハカマじゃなくてハカナだよ。」
「あ、ごめん。」
優鈴は悪びれもなくケロッとそう言った。…ああ桜くんちょっと怒ってる。
「お〜よしよし。いっつも年上のお兄さんたちに好き勝手言われちゃうからストレス溜まってるんだよねえ、よしよし。」
「ワーイ霧雨さん大好きー。パンケーキ奢ってー。」
「はいはい奢ってあげますよ。」
調子の良いことを言っているが甘えているようにしか見えない。ふふ、優鈴の言う通り、確かに弟っぽいかも。
「良いから離れろ」
とか考えていると実弥がバッと間に入り、桜くんを引き剥がした。
桜くんはじいっと実弥を睨むでもなく見ていた。
「……なんだよ」
「……」
桜くんは何かを言おうとしたが口を開いただけで何も言わなかった。
「…桜くん?」
一瞬。
一瞬だけ、彼が今にも泣き出しそうな幼児に見えた。
気のせいではない。これはもう確信だった。
「…大丈夫?」
私がそう声をかけると、彼はグッと唇を噛んだ。目が何かを訴えていた。
「もしも」
桜くんは掠れた声で言った。
「もしもまたハルナに何かあったらどうしよう」
震えていた。
誰もが言葉を失った。