第19章 鬼殺隊の次は
窓の外はすっかり真っ暗になっていた。
仕事帰りの実弥が真っ青な顔でソファーに座り込む一方で、私たちはフローリングで膝を抱えて座り込んでいた。
「…今なんて言いました?」
「のお見合い相手が鬼舞辻無惨だった上に、ここら辺の地域を担当する政治家のトップになってた。」
「………」
優鈴が淡々と説明する。
うん。淡々と説明できるのがこいつだけなんですけどね。精神力では人一倍タフな桜くんでさえ処理落ちしてさっきから訳のわからないことを部屋の隅でブツブツ呟いているのに、本当にたくましいわ。
ていうか桜くん大丈夫かな……。でも、元鬼殺隊にとっては鬼舞辻無惨なんてトラウマでしかないよね。
「ぶっちゃけ僕はあいつに会ったこともない。でもまあ電話で声聞いてわかったよ。あれはくそオブくそ。くその中のくそだね。」
…そうか優鈴は会ったことないから強気でいられるのか。
いや会ったことなくてもこうはならんでしょ。優鈴って鬼に対しては強気なイメージがあったけど、こうなると頼もしいかも。
桜くんは頭が良い分、現実が見えて挫けちゃうのもよくあったしな。…多分放ってても今は大丈夫かな。
「が狙われたのはラッキーだったんじゃない。」
「へ」
「何さっきから絶望してんだよ。お前最強剣士だろ。」
優鈴がじろりと睨んでくる。
「いやーそれは何百年も前の話…それにあの頃は毎日訓練とかしてたから…。」
「……はっ、毎日特訓してないお前にも僕は勝てたことないけど?」
「いや、あれはお遊びでは。」
優鈴はギロリと睨んでくる。
え??なになに??なんで怒ってるの??
「はー、つーかそれは無惨も同じだ。あいつもまさか殺人はしないでしょ。この時代に。プラスで言っとくけど、ここまで来たらもはや僕らだけの問題じゃないだろ。」
「と言うと?」
「お前頭使えよ…。」
頭、という単語に俯いていた桜くんが顔を上げた。
「鬼に対して最初にのろしを上げたのはどこの誰だ?」
そこで私たちもピンと来た。
「動きだすよ。………産屋敷がね。」
優鈴の言葉は希望のようでも思えた。
しかし、それはまた過去の戦いを思い出させる絶望の始まりでもあった。