第17章 夏の終わり
「あんたにお見合い話来てるのよ」
「…は?」
完全に思考がショートした。
今すぐ卒倒しそうだ。
「写真見せたら気に入ってくれたみたいで…」
「ちょ、ちょっと待って、お見合いって何?急にそんなこと言われても…」
「お見合いっていうか、とにかくあんたを気に入ってる人がいるからその人と結婚して欲しいの。」
「……い、や、あの」
だめだ。
話が通じていない。
「会ったこともない、のに?」
「うちは代々お見合いって決まってるの。私も姉もそうだったんだから。」
そう言われて春風さんに視線を送ると、彼は黙って頷いた。
親が…見合い結婚…?え、うそ、知らなかった…。
「だから、あんたもお見合いね。」
「いや、あの、あんまり詳しく知らないけど、お母さん氷雨家と縁切れてるんでしょ?何で氷雨家のやり方に従ってるの?」
私が問い詰めると、母の表情が変わった。
あ。
これは。
逆鱗に触れたな。
「さっきから質問ばっかりうざったいのよ!!これからのことはもう決まってるんだからそれでいいでしょ!!あんたみたいなの貰ってくれるって言うんだから!!!」
母が狂ったように怒鳴り始めた。
こうなるともう話し合いは無理だ。
「おい」
その時、低い声が響いた。実弥だ。
「俺はをあんたにやるつもりはない。そうやって自分の娘を飼い殺そうとすんのはもうやめろ。」
実弥が諭すように言った。
怒っている。それが嫌なほど伝わってくる。
「実弥」
私は彼の肩から手を離した。
「…もう、何も言わなくていい」
「!お前…!!」
実弥がそう言うと同時だった。
「黙れ!!!」
母親が一番大きな声で叫んだ。