第17章 夏の終わり
春風さんに促された母親は水を得た魚のように話し始めた。
「、あなた入院してたんだって?」
「う、うん…でも体はけっこう回復してて……」
「いや、それはいいのよ。」
それ、ですか。
いちいち発言が引っかかる。神経を逆撫でしてくる。
一応、あなたから生まれた体なんだけど。心配しろとか言わないけど、それ呼ばわりはやめてほしい…。
「この人たち、私に怒ったのよ。あんたからお金取るなって。」
「……。」
私はギョッとして二人を交互に見比べた。
え?待って待って???それ私誰にも言ったことないんですけど。
「もしかして二人に言ったの!?」
「違うわ。この二人が私に言ってきたのよ。」
また二人に視線を投げる。
春風さんは物言わぬ木のように虚空を見つめていた。実弥が言いにくそうに渋々話し出した。
「お前が春風さんに任せてた口座のなかに一つ変なのがあるって話になるってな。調べてみたら母親への送金をしてたことがわかったってことだ。」
「…勝手なことをしたのは私です……」
春風さんが自白するかのようにぼやく。
…なんてことだ。
母親への送金は学生時代から黙って続けていた。誰にもバレないようにって。それなのに、こんな形でバレてしまうなんて。
「……ちょっと、待ってよ…それじゃあ、今あの口座はどうなってるの…?」
「………凍結させました。事情が事情だったので、代理人として私が。」
春風さんは青い顔で答えた。
「な…なんで勝手なこと…ッ!!」
「すみません………」
どうりでさっきから様子が変だと思った。
私に隠してたことが暴露されるって予知してたな、この人…!!
「ふ、二人とも、このこと隠してたってこと…?私に言わないまま、この先もずっと……!?」
「、落ち着け。……春風さんだって良かれと思ってやってたんだよ。」
「ッ私だって良かれと思って隠してたの!!!」
私は勢いに任せて怒鳴った。
いくら個室とはいえ隣の部屋に声が聞こえてしまったかもしれない。けれどそれ以上に激昂していた。
「ちょっと、あんたたちうるさいんだけど。」
そんな私を落ち着かせたのは母親の一言だった。