第17章 夏の終わり
「これお前の?」
実弥が私の前にある料理を指差した。
「え、うん」
「くれ」
「え」
すっとお皿を動かし、もぐもぐと食べ始めた。
まさかの行動に若干引いていると、隣で春風さんも料理に箸を伸ばしていた。
すると、実弥が箸でおかずをとって私の口にはこんできた。
「え」
と声を漏らす私の口にそれを突っ込み、また自分で食べだした。それが何回か繰り返され、丁度二人で半分ずつ食べた…と思う。
「なんだ、やっと食べた。黙ってるから気まずかったわよ。」
お母さんがホッとしたように言った。これにはピシリと固まる。春風さんも。
(お前のせいだろ)
と二人でシンクロして叫びたかった。あ、春風さんこんな乱暴な言葉使わないか…。
唯一反応したのは実弥だった。
「食ったは良いけど足りねぇ。」
……そりゃ半分私にくれたからね!!
「はあああぁぁー………」
春風さんが大きなため息をついた。それにビクッとする。髪をかきあげてテーブルに肘をついた。
「………うし、腹も膨れた」
「「え」」
今度は実弥とシンクロする。
待って春風さん今なんて言った??ちょっと普段とは想像もできないような話口調に…。
「では…あー、事の経緯を……説明しますか。」
だが一瞬で元に戻った。
「……何から話せば良いか…さんが眠っている間の話になるのですけど。」
「お金のことでしょ。」
春風さんの笑顔が引きつる。そして笑っていない目で口を挟んできたお母さんを見つめていた。
……春風さんにこんな顔をさせるなんて、よっぽどだよ…
「そうですけど、もう少しこちら側のことを考えていただいて…。」
「は?」
………。
「はい、もう続けていただいて…。」
春風さんが遠い目をする。かなり心労が溜まっているようだった。彼は申し訳なさそうに私に視線を投げたが、心底同情して頷き返した。
…話が通じないところは相変わらず、か。