第16章 疲弊
目にうつるもの全てに腹が立つ。
イライラが最高潮に達すると、何でこんなことになっちゃったんだろうと悲しくてたまらなくなる。
その次は思いつくこと全てに不安を感じてしまって、何もできなくなる。
永遠にそれの繰り返しだ。お腹が痛くなるだけでは飽き足らず、どうも神様はいらないオプションまでつけてくれたらしい。
今日はそのオプションがひどかった。
朝ごはんを何とか完食した私は、テーブルに突っ伏している。準備も後片付けも全部実弥がやってくれた。
「実弥ぃ、ゴメンネ…ナニモデキナクッテ……」
「いいから。寝るならテーブルじゃなくて布団行けよ。」
「ずっと寝てると気持ち悪いんだもん……。」
実弥の前でこんな風になってしまったことはないので、おそらく彼も驚いていたと思う。それでも根気強く私の相手をしてくれていた。
「うぅ、嫌だよね、こんなやつの相手したくないよね」
「誰にだって辛い時はあるだろ。…本当に病院行かなくていいのか?」
「行かなきゃなのはわかってるけど、そんな気になれないの。」
そこでまたメソメソと泣くと、実弥は優しく背中をさすってくれた。
「買い物行こうと思うけど気分転換に来るか?」
「行きたいけど行けないぃ…ごめん……」
「それならそれでいいから謝るなよ。なんか欲しいもんとかあるか?」
実弥がそう聞いてきた。真っ先に思いつくのは女の子の必需品のナプキン。蜜璃が買ってくれたけれど、思ったより消費が激しいので新しいのが欲しい。
それを伝えると、実弥はわかったと言ってくれた。
実弥が出て行く時になっても私はテーブルに突っ伏していた。
「あ」
咄嗟に思い立って声を上げた。今にも出かけようとしている実弥が動きを止める。
「実弥、一つだけ覚えて欲しいことがある」
「何だァ?」
「羽つき」
「は?」
実弥は首を傾げた。
「ついているかついていないかで言うと羽はついていたほうがいい。」
「…?わかった。」
わかっていないようだったがそう言って実弥は出かけていった。
帰ってきてから買ってきてくれたものを見ると、私が言った通り羽つきのものがちゃんとあって言ってよかったと思った。