第16章 疲弊
その隙を見て私は言った。
「生理なの」
しゃがみ込んで実弥と視線を合わせて言うと、彼は何回か早い瞬きを繰り返した。
「でも、いつもあんな風に寝転んだりしねェし…ケーキだって食べてただろ?」
実弥はまた数回瞬きをした。
「本当はこうなっちゃうの。」
何言っても理解してくれないだろうなと思い、大人しく白状することにした。
「実弥と同棲するのに毎月こうなったら困るから、一緒に暮らしてからは産婦人科で薬もらってた。でも今回は病院行けなかったし薬も切らしちゃってたから、体の具合が特別悪いんだ。でも市販の薬飲んだし、もう本当に大丈夫だから。」
これでわかってくれるかと思って説明したが、実弥はムッと顔をしかめた。
「じゃあこの何年もお前は俺に隠れて病院行ってたのかよ」
「その通りだけど……それは言い方が悪くない?」
実弥は怒っているようだった。
「私だってこういうこと男の人に言いたくないんだよ。」
最後はもはや言い訳だった。もう言うことがなくなったので黙り込む。次に話し始めたのは実弥だった。
「俺は他人かよ」
「…え?」
「もう一緒に住んで何年になるんだよ。…何でお前は全部秘密にするんだよ。」
実弥は続けた。
「俺だって秘密にすることはある。言えないことだってあるよ。けど、お前は全部隠して急にいなくなって…後悔に殺されそうになるんだ。
無茶して働くお前を止めなかったこととか、具合の悪いお前を放っておいたこととか、俺は全部後悔したよ。
頼ってくれればそれでいい。生理…その辛さはわかってやれないけど、お前のために何でもする。言いにくいかもしれないけど、俺はお前のことが大事なんだ。我慢しないで言ってくれ。」
実弥の顔は真剣だった。一つ一つの言葉が私に突き刺さった。
たまらずぎゅっと彼に抱きついた。
「わかった、辛かったら言う。でも実弥を信じてなかったとか、頼りないとか思って隠してたわけじゃないよ。それだけはわかって。」
「…うん、それはわかってるよ。」
実弥の手が背中に回された。
今日はずっとダメダメだったけど、ようやく良いことがあった。その時にわかったが、実弥も朝のことは気にしていたとのこと。
「完全無視されるか殴られるかどっちかだと思ってた。」
……うん、本気で怒ってたらやってた。