第16章 疲弊
部屋に入ってきた実弥と目が合う。
「おかえりい〜…」
「……!!」
何とか起き上がって彼に向き合う。
私の姿を見た彼は、どさどさと持っていた荷物を床に落とした。
「え、何してるの…買ってきたケーキ大丈夫?」
「お前、具合悪いのか!?」
荷物なんてそっちのけで私に駆け寄ってきた。
そういえば蜜璃も私を見た瞬間に心配してきたな。…そんなに顔色悪い?
「あ〜大丈夫大丈夫。ご心配なく。」
「アホ!!病院行くぞ!!!」
「え」
実弥が怒鳴った。
本当に支度をしようとするので慌ててその手を掴んだ。
「待って待って!!これ本当に大丈夫なやつ!何ともないやつだから!!」
「そうやって先延ばしにしたからどんどん悪化したんだろうが!!」
「え〜と実弥く〜ん?待って〜??」
私が引っ張っても止まらない。
「あの、待ってマジ待って。止まって止まって。」
どうやら私の意見は無視することにしたらしい。引きずられるままリビングまで連れて行かれた。
私は覚悟を決めて、彼の手を掴む腕に力を込めた。
「喰らえッ!!!」
「イッテェ!!!」
実弥が悲鳴をあげる。
「な、何しやがんだテメェ…!!」
「アームロックゥゥ…!!!」
「俺は技名を聞いてるんじゃねェよぉ……!」
入院中、たまたまテレビで見て覚えたプロレスの絞技だ。本当に痛いのかな、とかあの時は思っていたけど今の実弥を見ると相当辛いらしい。ごめんなさいプロレスラーさん達。
更に力を込めると実弥は呻き声を上げた。
「実弥…!朝はごめんね…!!」
「き、気にしてねェ、気にしてねェから…!つーかこの状況で言うことかァア!!!」
「今日一日謝り方考えてました!」
「そうかァ…!わかったから離せや…!!」
「やだよ、離したら病院連れてくじゃん…!!」
「…骨……お、折れる…!!!」
実弥が悲鳴に近い声を上げそうになったところで、私は技を解いた。実弥は地面にへたり込み、腕をおさえてうずくまった。