第2章 混濁
いろんな人が会いに来てくれるのは嬉しいけど、私今どんな顔してるんだろう。
ずっと寝てたしきっとひどい顔をしてる。なら恥ずかしい。優鈴も実弥も特別親しいからいいけど、それ以外の人はちょっと困るかもしれない。
「かー」
私は花を元の場所に戻す実弥に声を投げた。
さっきみたいにうまく話せない。
「か?」
「かー、が、いーー」
ああもう、むかつく。さっきのは奇跡だったの?ベロが全然動かないし、喉が張り付いたみたいに震えない。最悪。
「…ああ」
しかし実弥はわかったのか、ちょっと待ってろとベッドの側の引き出しを漁る。
「お前のばあさんが、使いたいってそのうち言うだろうからってこの前置いてったんだ。この子は見た目を気にするだろうって。」
……さすがおばあちゃん。私のことをよくわかってる。
「別に恥ずかしいことなんてないぜ?いつも通りの可愛い顔だァ。」
実弥がにこりと笑う。
…え?今なんて言った?ちょ、ちょっと待って。
もう一回言って。
しかしそんな私を他所に実弥は鏡を私に向けた。
「見えるか?」
鏡にはっきりと私が写った。
少しだけ顔色が悪い。
可愛いとは程遠くて、私は顔をしかめた。
「…嫌なのか?」
実弥が言う。
私は手を動かした。
最近は指だけじゃなくて、ちゃんと動かせるようになった。そんなに激しくはダメだけど、ゆっくりなら全然大丈夫。
「い、やー…」
私は前髪を整えようとしたが、うまく動かなくて軽く撫でることしかできなかった。
髪の毛がボサボサだった。ずっと寝てたから仕方ないけど、こんなの嫌だ。
「……そんな顔すんなよ。お前は美人だって。」
「う、あ」
私がしかめっ面をやめないので、実弥は困っていた。