第2章 混濁
次の日に実弥が来てくれた。
その日は見舞品の話をしてくれた。天井を見上げるだけの私に花を見せてくれた。白い花だった。
「でも、なんて言うかなァ。なんて花だったか…。」
実弥が首を傾けた。
「ガーベラじゃない?」
はっきりと病室に自分の声が響いた。
実弥が驚いていた。私も驚いた。
「お、おい…お前……。」
「あ、あー…、う」
やはりまだ声が出しにくい、今の一瞬だけだったのか。
それでも実弥は嬉しそうに笑った。
「……ははっ、なんかもうすっかり元気だな。」
嘘みたいだと、本当に嬉しそうに。
どれだけの苦労をかけたのか痛いほど伝わってくる。私は泣きそうになったが笑い返した。
「…これなァ、悲鳴嶼さんがくれたんだ。」
実弥は言う。
「今度呼ぶから、来たらお前からお礼言ってくれ。」
どこか悲しそうに花に笑いかけた。私はゆっくり頷いた。