第16章 疲弊
コンビニの駐車場に一台の車がとまった。可愛らしいピンク色の軽自動車だ。
いいなあ、私もあんな車欲しいなあ…。と思って見つめていると、運転席のドアが開いて女の子が降りてきた。
「あーーっ!やっぱり、先輩!!」
聞こえてきたのは無邪気な声。桜餅色の髪の毛を編み込んだ、特徴的な髪型……。
「蜜璃…?」
「えへへ、先輩見つけて思わず車とめちゃいました〜!」
彼女は笑って朗らかに言う。嘘ではない。でも、それだけで私にわざわざ声をかけにきてくれるなんて変わった子だな。蜜璃はそこが可愛いんだけど。
「車、運転できたんだ?」
「実はできるんですよ!車は親の借りてますけど。」
大学生のうちはそうだろうな。私もおばあちゃん達の借りてたし。同棲してからは実弥の車借りてたけどね!!ガソリン代とか洗車代は払ってたし、タダで使ってたわけじゃないけど!
「先輩、一人でお出かけですか?…顔色悪いみたいですけど、大丈夫ですか?」
「え?」
そう指摘されて慌てて自分の顔に触れた。…とはいえ、こんなことをしても顔色の悪さはわからない。
首を傾げて無言でいると、蜜璃はさっと青ざめた。
「…まさか、また心臓が……」
そう呟く彼女に目を見開く。…何か、すごい勘違いをしてないか??
「具合悪いなら、病院行った方がいいですよ!私車で連れて行きますから!」
ついにはコンビニの駐車場でそう訴え出した。
本当はただの女の子の日なのだが、こんな公の場で言える程私のメンタルは強くない。
「あ、いや、その、大丈夫なやつだから…。」
「何言ってるんですか!先輩顔色悪いし、足がフラフラしてますよ!?ほら、病院行かなきゃ!!」
蜜璃がぐいぐい私の背中を押す。逆らいたいが力で蜜璃には敵わない。
「いや、待って蜜璃!認めるよ!確かに具合悪いよ!?でも病院は行かなくていいの!!」
「だめ!!だめええ!!絶対病院連れて行きますからああ!!」
蜜璃は無理に私を車に押し込んだ。
後部座席で目をパチクリさせている間に、蜜璃が運転席に乗り込んで病院にナビの行き先を設定していた。
「蜜璃!!本当にちょっと待って!!!」
慌てて身を乗り出し、今自分が女の子の日……つまりは、生理であることを伝えた。