第14章 意味のわからない話
春風さんは私が寝転ぶ側に腰掛けた。
「……そう…ですね。鬼になるというのは、覚悟のいる話でした。ハカナの気持ちを考えると、責めることも出来ませんでしたから。」
当時のことを振り返っているのか、彼も苦しそうに顔を歪めた。
「私はね、あの薬を飲む時点で、自分はもう長生きはしないだろうと思っていたんです。」
「…?」
「一番長く隊にいましたからね。あと、歳のこともありましたからそろそろ自分の番かなと思っていたんです。」
春風さんは続けた。
「でも、あなたは生き抜いたんですよね。あの鬼殺隊で。」
「…。」
「私たちには確かに大義があった。果たすべき目標があった。しかしそれを誰かに受け入れられることはないでしょう。鬼になった者は虐げられて然るべきです。…普通なら、ね。」
春風さんが打って変わってにこりと微笑んだ。
「実弥くんはあなたを責めましたか?」
「…え?」
突然そんなことを言われて驚いた。咄嗟のことに間抜けな声しか出てこなかった。
「いえ、彼だけではありませんね。誰かあなたを責めました?ふざけるなって殴りました?」
「……いいえ。」
「そうですよね。私たちだって、ハカナを責めたことは一度もありません。」
春風さんの言葉の一つ一つが私に響いた。
「私は…あなたたちがお互いに幸せになってほしいと思うんです。良いと思う選択をしてください。勇気も覚悟もまだまだ足りないでしょうけど。」
「……うう、春風さんどうしてどんなに大人なんですか〜!!!!!」
「ははは、一つしか変わりませんよ私たち。」
言わんとしていることはわかる。けれど判断をするのも行動をするのも最終的には私だ。
しっかりしなければ。
私は、この世界で一人しかいないのだから。