第97章 鬼霞
みんな悔しがったり喜んだり、楽しそうだ。
「」
でも私。
「おい、聞いてる?」
「っ、優鈴。」
「うん。僕。…不安なの?」
最後の一言は誰にも聞こえないような声量だった。
「………もし」
「もし?」
「みんなが、あの“私”を選んだら…」
それは私も同じで、声はひどく小さかった。優鈴は驚いたように目をパチパチさせていた。
そして何も言わずに去っていって、しばらくしたら実弥を連れて帰ってきた。
「おい、何だよ」
「お前はここにいて」
「だから何でだよ」
優鈴は実弥を私のとなりに置いてとっととどこかへ行ってしまった。
「何なんだよ…」
実弥に説明しようと思ったんだけど、うまく言葉が出てこなくて困った。
「優鈴が鬼を連れてくるって」
言葉にできたのはそれだけで、自分の気持ちとかは言えなかった。優鈴には言うことができたのに実弥の前だと口が動かなかった。
「それで死にそうな顔してんのか。」
「………そうだね、死にそう。」
「堂々としてりゃいいだろ。」
実弥は簡単に言うけど、そうはいかなかった。
倒れそうなくらい不安でしょうがないのに。
「嫌なこと言われても怒鳴り返せばいいんだ。」
「…できないよ。」
「お前、怖い時は意味わからねぇくらいおっかないのになんでこういう時は弱いんだよ。」
呆れたように言われて、勝手なことに視界が歪んだ。
ここで泣いてしまえばずるいやつになるのに。
「わかんない」
「は、おい」
「自分でもわからないの」
何がこんなにも私を不安にさせるのか、実弥の言う通り、どうして私はこうも波があるのか。
思っていたよりも泣いた時の震えた声が出てしまったので一度この場を離れて落ち着こうと思ったが、実弥に腕を掴まれた。