第97章 鬼霞
ドン!ガン!!バサバサッ!!
大きな音に驚いたのか赤ちゃんが火のついたようにギャーッと泣き出した。
「うう…」
私が呻き声をあげた頃に実弥が慌ただしく部屋に入ってきた。
「おい、なんかデケェ音したぞ!?」
「……だろうね。とりあえずこの子お願いしていい?」
赤ちゃんに物が当たるのはまずいと思い、赤ちゃんを庇うために私が覆い被さったのだ。
「な、何があった?お前は大丈夫なのか?」
「大丈夫。強い風が吹いて物が落ちてきたの。腰を打っただけだから…」
実弥を安心させようと体を動かしたが、腰にいやな痛みが走ってその場にうずくまった。
「!!」
赤ちゃんを置いてから実弥が私の腰を支えるように手を当てた。
「……こ、これしきのことで…」
「いいから大人しくしとけ。」
実弥は私を寝かせたが、それさえも痛くて悲鳴をあげた。
「そ、そんなに痛いのかァ…?」
腰にビリビリと変な痛みが響く。これは何をしてもダメだと思い、私は痛みを堪えてなんとか起き上がった。
「大丈夫……耐えられる、から」
「耐えんな病院直行だ。」
私の努力も虚しく病院へ強制連行。骨は問題ないらしいが、痛みがひどいのでコルセットと湿布をもらった。時間薬で治すしかないらしい。
くそう…落ちてくる前に赤ちゃん抱き上げて落下物はねのけて臨戦態勢入るくらい余裕でできたはずのに。あの時は庇うことしかできなかった。やっぱり体力が落ちているようで、無力すぎて情けない。
「高いところにある物は全部片付けておいたから、大人しくしておけよ。」
「はい…」
情けなくて悔しいけど、絶対安静を言い渡された私は布団の上で力無く返事をするしかなかった。