第96章 現代版柱稽古2
湿っぽい空気になったところで、あたりが騒がしいことに気づいた。
「…何かあったのかな」
みんなから離れたところで休んでいたので気づかなかったが声はずいぶんと大きい。
「どうせ誰かが揉め事を起こしたんだろう。俺が様子を見てくるから、霧雨はここで休んでいるといい。」
「え、私も一緒に…。」
「どうせ大したことじゃないだろうからな。顔色もあまり良くないしここにいてくれ。」
伊黒くんが去った後、思わず顔に手を当てた。…私ってよく顔色悪いって言われるな。ていうか言われすぎじゃない?
反省しよう。栄養とか意識して睡眠もちゃんと取ろう。
実弥とあの子のためにも……。
しばらく一人反省会をしていた時、あたりがやけに静かになったことに気づいた。
「伊黒くん、遅いな。」
すぐ戻ってくるかと思ったけど来る気配がない。そんなに大変な問題が起きているのだろうか。
少し覗きに行こうと思ってその場を離れた。
みんながいるはずの場所に行くと…。
「な、何これ…」
稽古に来ていたみんなが地面にバタバタと倒れていた。
悪ふざけにしては度が過ぎていると思って慌ててそばに倒れていた煉獄くんに声をかけた。
「煉獄くん!どうしたの、何があったの!?」
「…き、霧雨さん……」
「しっかりして!」
彼はむくりと起き上がり、口元を抑えて青い顔のまま話し始めた。
「み、みんなで話が盛り上がって…腹が減ったという話になってな、そこで、不死川が大事そうに持っていた重箱を、宇髄がこっそり拝借してきたんだ…その中に入っていた、おはぎを食べたら……」
「おはぎ?」
「……そこからは記憶がない…気づけばみんな倒れていた。」
変な汗が体から吹き出してくる。すごい嫌な予感がした。
「あれは本当におはぎだったのか…ただ一つ確かなことはあんこの味は全くしなかったということだ。…不死川はなぜあんな凶器を持っていたのか……。もしや、あのおはぎは鬼舞辻派のスパイが仕込んだもので、不死川はそれをわかって、誰も口にしないように大事そうに抱え込んでいたのやもしれん…!」
「……そっか」
煉獄くんを再び寝かせて、倒れているみんなの中心にある重箱を拾った。
それは間違いなく、私が朝に作ったおはぎを詰めたものだった。